「くらしの資金貸付制度」が終了
枚方市が長年実施してきた「くらしの資金貸付制度」が、令和6年度(2024年度)末をもって廃止となりました。
(後で気が付きました)
この制度については、私自身、市議会議員時代から何度か議会で取り上げてきましたので、今回、制度そのものが終了したことについては、一つの大きな見直しとして評価しています。
以前から議会で取り上げてきた「くらしの資金貸付制度」
「くらしの資金貸付制度」は、生活に困窮している方の自立を支援するため、枚方市が独自に行ってきた貸付制度です。
制度自体は昭和44年(1969年)に創設されたもので、生活困窮者への支援制度が現在ほど整っていなかった時代には、一定の役割があったものだと思います。今回の市の資料でも、制度創設当時は生活保護制度、このくらしの資金貸付制度、社会福祉協議会の貸付制度などが主な支援策だったことが説明されています。
一方で、長年運用していく中では、返済されない債権が積み上がっているという課題もありました。
私が2019年9月議会で確認した際には、貸付総額約1.3億円のうち、約9,000万円が返済期日から10年以上経過している状況でした。
そもそも、この制度は「返済能力があること」を貸付条件の一つとしていました。生活に困窮している方への支援である以上、それぞれの事情に十分配慮する必要はありますが、一方で、市民の税金を原資とする貸付である以上、「貸したお金は返していただく」ということも基本です。
そこで私は、債権管理のあり方などについて議会で取り上げてきました。
特に、返済が滞った場合でも連帯保証人に督促を行っていなかったことについて、「保証人にも督促する業務フローをつくるべきではないか」と提案しました。
その後、市から報告があり、保証人にも督促を行う運用へと見直されました。2021年1月には、このことをブログでも報告しています。
ただ、私が問題意識を持っていたのは、債権回収の方法だけではありません。
「そもそも、この貸付制度を市が今後も続けていく必要があるのか」
という制度そのもののあり方についても、考えていく必要があると思っていました。
制度ができた当時から、生活困窮者支援を取り巻く環境は大きく変化
昭和44年(1969年)の制度創設から半世紀以上が経過し、生活困窮者を支援する仕組みは大きく変わっています。
平成27年(2015年)には生活困窮者自立支援法が施行され、自立相談支援をはじめ、住居や就労、家計改善など、生活保護に至る前の段階から支援する制度が整備されました。
社会福祉協議会が実施する貸付制度についても、貸付額や対象が拡充されるなど要件が緩和されています。
さらに枚方市では、「健康福祉なんでも相談」の設置や、コミュニティソーシャルワーカー(CSW)の配置などを進めてきました。
単に「お金が足りないから貸す」というだけではなく、なぜ生活に困窮することになったのか、その背景にある複合的な課題も含めて支援につなげていく体制が整備されてきたということです。
こうした支援制度の充実や個別支援の強化もあり、くらしの資金貸付制度は令和3年度(2021年度)以降、貸付実績がない状態となっていました。
また、令和3年度(2021年度)の枚方市の包括外部監査でも、市と社会福祉協議会が連携して生活困窮者支援を効果的に行うため、相談業務や貸付制度について役割分担を協議する中で、「くらしの資金貸付制度」の今後の方向性を検討する必要があるとの指摘を受けていました。
2025年2月の市民福祉委員協議会で廃止方針が報告
そして、令和7年(2025年)2月の市民福祉委員協議会において、「生活困窮者のさらなる自立支援について」が報告され、その中で、くらしの資金貸付制度を廃止する方針が示されました。
委員協議会資料です↓
https://www.city.hirakata.osaka.jp/cmsfiles/contents/0000053/53646/08_seikatsukonnkyuu.pdf
市が示した今後の方向性は、貸付については社会福祉協議会の貸付制度を活用し、生活困窮を含む相談機能については市が担うというものです。
その上で、くらしの資金貸付制度を年度末で廃止するとともに、CSWを増員し、重層的支援体制をさらに充実させることとされました。
スケジュールについても、資料では、
令和7年(2025年)2月 市民福祉委員協議会へ内容について報告
3月 枚方市くらしの資金の貸付けに関する条例等を廃止する条例の制定
4月以降 CSWの増員による重層的支援体制の充実
とされています。
つまり、今回の見直しは「生活に困っている人への支援をやめる」というものではありません。
市独自の貸付制度については役割を終えたものとして廃止し、その一方で、生活困窮に至った背景も含めて支援につなげる相談支援体制を充実させていく。
そうした支援のあり方の転換です。
「事業をやめる」ための調整も大変
行政では、新しい事業を始めることに注目が集まりがちです。
しかし、既存事業を検証し、社会情勢や他制度の変化を踏まえて、役割を終えた事業を終了することも大切な行政改革です。
そして、実際には、新しい事業を始めること以上に、長年続いてきた事業をやめることの方が難しい場合もあります。
今回についても、単に「利用がないので廃止します」で終わるものではありません。
社会福祉協議会をはじめとした関係機関との役割分担を整理し、生活に困っている方への支援に空白が生じないようにしなければなりません。
また、制度を廃止しても、それまでに貸し付けた債権がなくなるわけではありません。
市の資料でも、「くらしの資金貸付基金」は、廃止後、現在貸し付けている債権を除いて一般財源へ繰り入れる一方、残っている債権については引き続き管理し、返還されたものから一般財源へ繰り入れることとされています。
制度廃止に至るまでには、こうした債権の整理や、庁内での調整、社会福祉協議会をはじめとする関係各所との調整、そして今後の相談支援体制の構築など、さまざまな実務があったと思います。
私自身、以前から制度の見直しについて問題提起してきた立場ではありますが、実際に制度を終了させるところまで持っていくためには、担当職員の皆さんの相当な労力があったと思います。
長年続いてきた制度を整理し、新しい支援の形へと移行された担当職員をはじめ、関係された皆さまは本当に大変お疲れさまでした。
一度始めた事業は、なかなかやめられない
そして、今回の件を通じて改めて感じるのは、
「行政の事業は、一度始めるとなかなかやめられない」
ということです。
この制度も、昭和44年(1969年)の創設当時には必要な制度だったと思います。
しかし、それから50年以上が経過しました。
社会情勢は変わります。
国や府の新しい制度ができます。
民間や社会福祉協議会などが同様の役割を担うようになることもあります。
行政が事業を始めた当時には必要性があったとしても、10年、20年と経てば、その必要性や行政が担うべき範囲が変わるのは当然です。
一方で、一度事業を始めると、予算がつき、組織の業務として定着し、利用者や関係者も生まれます。
そのため、「今も本当にこの事業が必要なのか」という議論自体が難しくなってしまうことがあります。
だからこそ、新しい事業を始める段階から、ある程度の終期や見直し時期を定めておくことも必要ではないでしょうか。
