沖縄における廃材活用の先進事例:株式会社kapok 岡戸大和氏の取組
沖縄県で古建物や廃材の活用において革新的な実践を行う建築家、岡戸大和氏と彼が代表を務める株式会社「kapok」の視察報告です。同氏らの活動は、単なるリノベーションに留まらず、廃棄されるものを資源と捉え、地域内で循環させるという独自の哲学に基づいています。
資源化の哲学:すべてを素材として捉える視点
岡戸氏の取り組みの核心は、廃棄物を単なるゴミとしてではなく、価値ある素材として捉え直す哲学にあります。岡戸氏自身は、この視点について次のようにおっしゃっています。
「廃材だ、ゴミだと言われて捨てられるものを、私は“取れたての旬の素材”ととらえています」
この思想の基盤にあるのは、「全部使える」という信念です。利用できるものとそうでないものを分別するのではなく、まず全てが活用可能であるという前提からプロジェクトの発想を始めます。
固定観念からの解放
この考え方は、岡戸氏が建築を学んでいた大学時代に抱いた「世の中にはすでに十分な建物ストックがある」という葛藤から生まれました。その迷いを解消したのが、既存の建物を再生して生かす「リノベーション」との出会いです。この経験が、建築とは新築に限定されるという固定観念から解放し、現在の原点となっています。
沖縄の歴史的知恵との共鳴
この資源活用の考え方は、沖縄が歴史的に培ってきた知恵と深く共鳴しています。かつて資源に恵まれなかったこの島では、
- 糸芭蕉から作る芭蕉布
- 米軍基地の空き瓶から作る琉球ガラス
- 瓦葺き工事の余材から作る漆喰シーサー
など、先人たちが目の前のものを創意工夫で最大限に生かしてきました。kapokの取り組みは、この沖縄の創造的な精神を現代に継承するものであり、全てのプロジェクトの根幹をなしています。
哲学を具現化する具体的な建築事例
前述の哲学が、具体的にどのように建築として実現されているか、代表的な事例を挙げます。
2.1. YOYO 北中城の和菓子屋さん
- 概要: 外人住宅をリノベーションした和菓子店。
- 活用: 店内の什器や家具は、沖縄市コザで出た廃業家具を補強・修繕して再活用。
2.2. CLAY@やちむんの里
- 概要: 陶芸の里にある店舗。
- 活用: 基礎工事で出た赤土を、施主である北窯の松田共司氏にタイルとして焼いていただき、床に仕上げています。土地の素材を、その土地の建築に還すという象徴的な事例です。
うんてん洋菓子@豊見城
- 概要: 築60年の教会の建物を活用。
- 活用: 築60年の教会の扉を幅12メートルに及ぶ壁のアクセントとして再構築。店内のカウンター材も同様に、その教会の廃材から作られています。
イタリア料理店「アレコ」
- 概要: 床、壁、天井のすべてが廃材で構成された店舗。
- 活用: 解体された民宿の床材、那覇の港で使われていた運搬用パレット、別の現場で余ったタイルなどが組み合わされています。運搬用資材は、釘を抜き、天日に干し、切りそろえるといった手間をかけることで、デザイン性を持たせて利用されています。
その他の事例
- 珈琲ロマン: 解体された教会の建具を再利用し、カウンターを制作。
- ロースイーツの店「アボンダンス」: 近所の解体民家から出た畳の下地板を使い、重厚な大テーブルを制作。
地域資源循環の仕組みと展望
kapokの取り組みは、個々の建築物を超え、「まちの中で資材が循環する」仕組みの構築を目指しています。
地域社会との連携
その根底には「みんな職人、ぜんぶ資材」という考え方があり、地元の素材を、地元の人々の手で活用することを重視しています。このアプローチは、地域が抱える課題解決にも繋がっています。
日本全体で年間4500万枚が廃棄される輸送用パレットの問題に対し、彼らはこれを創造的な解決策を探るテーマとして捉えています。この発想の源流には、「祖父が荒川区の鉄くず屋だった」という岡戸氏自身の背景も影響しており、価値を見出す視点が継承されていることがうかがえます。
地域全体への展開
さらに、行政を巻き込み、公共施設の整備にも一部廃材を活用することを提案するなど、そのビジョンは地域全体に広がっています。廃材を共通のテーマとして活用することで、これまで接点のなかった事業者同士の間に新たな繋がりが生まれ、地域に新しい流れを生み出しています。
総括:視察から得られた考察
今回の視察を通じて明らかになったのは、岡戸大和氏の仕事が単なる建築デザインやリノベーションではなく、包括的な地域づくりの実践であるという点です。その取り組みは、以下の三つの要素に集約できます。
-
哲学: 捨てられるものに価値を見出し、「素材」として捉え直す視点。
-
方法論: 地域の素材と人材を活用し、地域内で資源を循環させる具体的な仕組み。
-
展望: 個々のプロジェクトを連携させ、地域全体の活性化と新たな価値創造を目指すビジョン。
kapokが沖縄で実践するこのモデルは、廃材活用という枠を超え、これからの地方創生や持続可能な社会を構築していく上で、全国の他地域にとっても極めて重要な先進事例であると言えます。
