災害時の「学びの保障」とD-ESTの意義 ― 枚方市で活用するなら | 前枚方市議会議員 木村亮太
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災害時の「学びの保障」とD-ESTの意義 ― 枚方市で活用するなら

地震や大雨などの大きな災害が起きたとき、学校は大きな役割を果たします。避難所として地域の人々を守る場所になる一方で、子どもたちの「学びの場」としても機能し続けなければなりません。ところが、校舎の被害や先生自身の被災、避難所運営などが重なると、授業の再開が大きく遅れてしまうことがあります。こうした課題に対応するため、文部科学省は「被災地学び支援派遣等枠組み」、通称 D-EST(ディーエスト) をつくりました。

D-ESTは、災害で学校が困難に直面したとき、他の地域から教職員や専門家を派遣し、子どもたちの学びを守るための仕組みです。ここではその概要と、もし枚方市で活用するならどのようなシナリオが考えられるのかを整理します。


D-ESTの概要

D-ESTは「Disaster Education Support Team」の略で、日本語では「被災地学び支援派遣等枠組み」と呼ばれています。目的は、災害が発生しても子どもたちの学びを止めず、学校をできるだけ早く再開させることです。大きく分けて三つの柱があります。

  1. 専門職の派遣
     校舎の安全点検や被害状況の把握を行う職員を、国から被災地へ派遣します。

  2. 学校支援チームの派遣
     他府県の先生方などで構成されるチームを派遣し、授業や学校運営を支援します。

  3. 心のケアを含む教職員派遣
     スクールカウンセラーや応援教員を派遣し、子どもや先生自身の心のケアを行います。

これらの支援は、災害直後の混乱期だけでなく、学校再開の過程でも続けられます。


枚方市で想定される災害と課題

枚方市は大阪府北東部に位置し、淀川や天野川など大きな河川が流れています。台風や集中豪雨の際には浸水や土砂災害の危険があり、また南海トラフ巨大地震の想定震度域にも入っています。災害時に学校が受ける影響は少なくありません。

想定される課題には、次のようなものがあります。

  • 校舎の損壊や浸水によって授業ができなくなる。
  • 体育館や教室が避難所となり、授業再開が遅れる。
  • 教職員自身が被災し、勤務できる人員が不足する。
  • 被災した子どもや保護者の心に大きな不安や傷が残り、学習への集中が難しくなる。

こうした状況を前に、枚方市単独で全てを解決することは難しいのが現実です。そこで全国的な支援枠組みであるD-ESTを活用することが有効となります。


枚方市でD-ESTを使う場合のメリット

  1. 授業の早期再開
     応援の先生が来てくれることで、学びの遅れを減らせます。特に受験生や特別支援が必要な児童生徒にとって大きな助けとなります。

  2. 心のケアの充実
     スクールカウンセラーが派遣されることで、子どもや保護者の不安に寄り添う体制が整います。災害後の心理的な支えはとても重要です。

  3. 教職員の負担軽減
     避難所運営と授業準備を同時に行うことは先生方に大きな負担となります。応援チームが入ることで市内の教職員の疲弊を防ぐことができます。

  4. 自治体間の連携強化
     大阪府内や他府県とのつながりを深め、今後の災害にも備えやすくなります。


課題と準備すべきこと

一方で、D-ESTを十分に活用するためには課題もあります。

  • 受け入れ体制の整備
    応援に来てくださる先生方の配置や役割を調整する窓口が必要です。教育委員会内に明確な担当を置くことが求められます。
  • 避難所と学校の両立
    避難所としての利用と授業再開がぶつからないように、あらかじめ利用計画を検討しておく必要があります。
  • 情報共有のスピード
    どの学校がどの程度支援を必要としているかを、迅速に府や国に伝えられる仕組みが必要です。
  • 市民への理解と広報
    「外部の先生が授業をする」という状況を、保護者が前もって知っていれば安心感につながります。

枚方市が平時からできること

  1. 教育版BCP(事業継続計画)の策定
     どの順番で授業を再開するか、オンライン学習をどう組み合わせるかを明文化しておく。

  2. 受援担当の設置
     教育委員会にD-EST受け入れ窓口を設け、被災時の調整を迅速にする。

  3. 訓練やシミュレーションの実施
     実際に外部教員が授業を行う訓練を行い、子ども・保護者に慣れてもらう。

  4. ICT環境の整備
     校舎が使えない場合でもタブレットやオンライン教材を活用できるようにする。

  5. 地域・保護者との合意形成
     災害時の学びの優先順位を平時から話し合い、理解を共有しておく。


結びに

災害はいつ起こるかわかりません。だからこそ、「もしもの時」に備えて教育の面でも準備をしておくことが大切です。D-ESTは、全国から応援を得ながら子どもたちの学びを守るための新しい仕組みです。

枚方市においても、この仕組みを活かすことで、災害時でも子どもたちが安心して学び続けられる環境を整えることができます。防災だけでなく「教育の備え」を進めることが、これからのまちづくりにとって欠かせない課題であると考えます。

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