前橋市のまちづくりSIBについて
SIB/PFSの手法がもっと広がってほしいと思っていますので、事例をブログにまとめております。
前橋市におけるSIB導入の経緯
前橋市では、従来のような行政主体のまちづくりから、市民や民間企業が中心となるまちづくりへの転換を目指し、2019年に「前橋市アーバンデザイン」という将来ビジョンを策定しました前橋。このビジョン策定の背景には、前橋市出身の株式会社ジンズホールディングスの代表である田中仁氏が設立した一般財団法人との連携があります市。2016年に地域再生プラン「めぶく」を策定したあたりから、まちづくりの動きが本格化し、米国ポートランドのまちづくりを参考にしたり、市民参加型のワークショップを通じて意見をヒアリングするなどして、2019年9月に「前橋市アーバンデザイン」が策定されましたにお。
このアーバンデザインでは、「エコ・ディストリクト(都市の利便性と自然が調和したまちづくり)」、「ミクストユース(多様な用途が混在するまちづくり)」、「ローカルファースト(地域固有の資源を活かしたまちづくり)」という3つの方向性が示されましたけ。具体的なモデルプロジェクトとして、以下の4箇所が設定されました
- けやき並木通り(道路空間の利活用をテーマ)
- 広瀬川河畔(水辺空間の利活用をテーマ)
- 馬場川通り(道路空間の再配分による利活用をテーマ)
- 駐車場の広場化(低未利用地の利活用をテーマ)
馬場川通りアーバンデザインプロジェクトとSIBの導入
「前橋市アーバンデザイン」のビジョン実現のため、2019年に一般社団法人 前橋デザインコミッション(MDC)が設立されました。MDCは、市民からの寄付金や会員費で運営される自立した団体で、都市再生推進法人としても指定されています。
モデルプロジェクトの一つである「馬場川通りアーバンデザインプロジェクト」は、馬場川沿いの約200mにわたる水路や遊歩道、道路空間を改修し、水辺空間を利活用することで親水性を高めるプロジェクトです。このプロジェクトには、前橋市にゆかりのある企業の社長たちが結成した「太陽の会」から3億円の寄付金が提供され、MDCがプロジェクトマネージャーとして、設計内容の調整や地元意見の調整、行政手続きなどの窓口を担当しました。
ハード整備だけでなく、市民の活動を促進するために、MDCは地域住民や若い世代に声をかけ、継続的なまちづくり勉強会を開催しました。このような民間主体の取り組みを支援する方法として、全国初の試みとして、まちづくり分野にSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)が導入されました。
SIB導入の背景には、補助金や業務委託では対応できない、民間の創意工夫を生かしたプロジェクトを支援したいという考えがありました。SIBは、成果に応じて報酬が支払われるため、行政側のリスクを低減できるというメリットがあります。また、民間事業者側も、事前に資金調達ができる点や、事業が失敗した場合でも投資家とリスクを折半できるというメリットがあります。
SIBのスキームと成果指標
SIBのスキームでは、まずゴールを設定し、そのプロセスは民間に委ねられますの。前橋市では、馬場川通りの歩行者通行量を成果指標として設定しました。これは、歩行者通行量と周辺店舗の売上に相関関係があるという調査結果に基づいています。
具体的な成果指標と報酬額は以下の通りです
- 目標A: 50,432人以上/月 → 成果連動支払額 570万円
- 目標B: 47,910人以上/月 → 成果連動支払額 380万円
- 目標C: 45,388人以上/月 → 成果連動支払額 190万円
- 目標D: 45,387人以下/月 → 成果連動支払額 0円
ベースライン(発注前): 46,456人/月
ただし、歩行者通行量だけでなく、まちなかのアクティビティの多様性や、市民の延べ滞在時間数なども計測し、事業の受託者であるMDCと共有しました。
事業の委託期間は2021年9月16日から2024年7月31日までの3年間で、MDCが受託者として業務委託契約を結びましたちづ。MDCは、この事業の資金提供者として第一生命保険をリストアップし、最終的に同社が資金提供者となりましたくり。資金の保全策として、すみれ地域信託が低廉な手数料で事業に参画しましたから。
実績について
最終的な測定結果は令和6年6月に測定され、
51, 039人でA評価です。
目標達成の要因として、事業者と行政が業務実施の意義を共有できていたこと、事業者がPDCAサイクルを回しながら柔軟に事業をアレンジして取り組むことができたことが挙げられています、。
市民からの寄付金を活用した新たな取り組み
前橋市では、まちづくりに対する市民の寄付金を活用するため、市が寄付金を受け付け、基金を組成し、民間のまちづくり事業を選定して助成するという仕組みも構築しました市。
他市への展開に向けたポイント
前橋市の取り組みを他市で展開するためには、まちづくりに対して強い思いを持って参加してくれる人をどれだけ多く集めるかが重要です民や。前橋市には、「人のためのお金を使う」という文化があり、太陽の会のように熱量を持って活動する人たちがいることが大きな力になっています。
まとめ
前橋市は、PFSやSIBといった新たな手法を導入し、市民や民間企業が主体となるまちづくりを推進しています間。これらの取り組みは、地域経済の活性化や市民の幸福度向上に貢献することが期待されています